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未来を育む企業の社員エンゲージメント向上施策:東京海上日動の職業体験学童プログラム

東京海上日動火災保険株式会社本社で学童プログラムが実施されました

生涯を通じて重要な「社会情動的スキル」

「社会情動的スキル」という言葉をご存知でしょうか?
2015年にOECDが定義したスキルで、
「a)思考、感情、行動の一貫したパターンとして現れることができ、b)フォーマルまたはインフォーマルな学習体験によって発達させることができ、c)個人の一生を通じて社会経済的成果に重要な影響を与えるような個人の能力」
のことです。特に、目標の達成、他者との協働、情動の制御をする能力を指します。※1
※1 出所:OECD(年) 「Skills for Social Progress THE POWER OF SOCIAL AND EMOTIONAL SKILLS」
*日本の教育現場ではOECDの定義を参考にした独自の定義・分類が行われ、「社会情緒的能力」や「社会情緒的コンピテンス」などとも呼ばれる。

それまで広範な概念であったいわゆる「非認知能力」が社会情動的スキルとして定義されたことで、国際的にこのスキルを伸ばすことが重視され、研究・調査が活発に行われています。
こうした研究の中で、「体験活動」がこどもの社会情動的スキルを高めるのに役立つことが示されています。
最近の日本では、家庭や地域による学校外でのこどもたちの体験機会の差、いわゆる「体験格差」が社会問題として注目されていますが、こどもの頃の体験活動が、生涯にわたって重要なスキルに影響すると分かってきたことも、この問題が注目される背景にあります。

日本でのこどもの体験活動の課題

日本で体験格差の要因として最も挙げられるのは「家庭の経済的事情」です。
これは重要な観点である一方、子育て期の保護者が時間的余裕を持てず、その結果こどもへの体験活動を諦めているという点も見逃せない課題です。
『子どもの「体験格差」実態調査』※2によると、保護者がこどもの体験活動を諦めた理由として「保護者に時間的余裕がない」が経済的理由と同程度に多く挙げられています。
このことからも、時間の制約が体験格差の大きな要因であることが分かります。
※2 出所:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(年)「子どもの「体験格差」実態調査最終報告書」

*上述の調査から作成

また、この調査では体験活動を次のように分類しており、農業体験・職業体験・ボランティアなどの「社会体験」の機会は他の体験活動に比べて少ない結果となっています。

スポーツ・運動 球技/水泳/武道・格闘技/ダンス・バレエ・舞踏/体操/陸上競技/ボーイスカウト・ガールスカウト/その他
文化芸術活動 音楽/アート・造形・工作/演劇・ミュージカル/外国文化(語学・英会話を除く)/習字・書道/将棋・囲碁/茶道・華道/料理/科学・プログラミング/その他
自然体験 キャンプ・登山・川遊び・釣り/海水浴・マリンスポーツ/ウィンタースポーツ(スキー・スノボー)/その他
社会体験 農業体験/職業体験/ボランティア/その他
文化的体験 動物園・水族館・博物館・美術館見学/音楽・演劇・古典芸能鑑賞又は体験/スポーツ観戦又は体験/留学・ホームステイ・外国文化体験/旅行・観光/地域の行事・お祭り・イベント/その他

*上述の調査から作成

時間に余裕がない家庭のこどもに、社会体験をどのように提供すればよいのでしょうか。

企業が行う福利厚生としての職業体験学童

――「夏波さまのお車の修理費については車両保険からのお支払いが可能です」

ヘッドセットをつけた小学生が社員に見守られながら損害サービス案内のロールプレイングを行っています

、東京海上日動火災保険株式会社が実施した「損害サービス(保険金支払い業務)」体験学童プログラムの一場面です。
このプログラムでは、自動車事故が起きた際の補償対応における企業と顧客のやり取りを、カードを使ったロールプレイングゲームで体験。こども達は普段身近に感じづらい損害保険商品がどのように顧客の役に立つのかを学びました。

同社では、小学校の長期休み期間中に社員のこども(小学生)を自社オフィスで預かり、事業内容に関連した職業体験プログラムを提供する取り組みを年に開始しました。
この日行われた「損害サービス」のほか、こどもたちの身近な困りごとを起点とした「損害保険商品開発」などの職業体験を通じて、損害保険の社会的意義をこどもたちに伝えています。
「自分の仕事がある中でも長期休み中にこどもに特別な体験をさせたい」というビジネスパーソンであり親でもある社員の思いを、企業の資産を活用して実現した、こどもの社会体験機会創出の好例です。

東京海上日動火災保険株式会社の職場体験学童へのスタンス

会議室で社員と参加児童がコミュニケーション

東京海上日動火災保険株式会社のこの取り組みは、社員の「仕事とライフの両立」をこれまで以上に高度に実現し、エンゲージメント高く働ける環境を整備するという企業方針から始まりました。
この方針を実現するため、従来の制度充実といったハード面だけでなく、職場風土などへのアプローチも重要であると同社は考え、小学生向けのプログラム開発・提供と預かり施策(キッズプログラム)をKODOMOLOGYと協働して実施しています。

  • ✓社員のこどもたちに思い出と学びの機会を提供するだけではなく、親の仕事への理解を深め、親子双方が「仕事とライフの両立」をポジティブに捉えるきっかけを作ること
  • ✓社員が企業パーパスや「社会的使命、仕事の価値・誇り」を改めて実感する機会を提供すること
これらを期待して行われた施策ですが、それを目指すことで結果的にキッズプログラムは社会体験の提供機能となることになりました。

また、当初のねらいどおり、キッズプログラムを利用した家庭からは、以下のような声が寄せられています:
「こどもから、親の仕事が社会の役に立っていることの理解と肯定的な言葉があった。それを受けて家族間の会話が広がり、親子コミュニケーションが深まった」
「家族に誇れる自分でありたいと改めて感じた。会社が仕事とライフの両立を支援していることが分かり、このような機会提供に感謝している。」
このように、社員自身が仕事への誇りや価値を再認識する場となり、家庭と職場の双方にポジティブな影響も広がっています。

こどもたちの社会情動的スキルを育む体験活動を広げるためには、家庭で工夫するだけでなく、企業や地域が連携して取り組むことが不可欠です。
企業による職業体験プログラムは、こども、親、社員、企業、ひいては社会全体に好循環をもたらす取り組みとして、今後ますます注目されるでしょう。

東京海上日動火災保険株式会社のキッズプログラムは東京海上日動火災保険株式会社とKODOMOLOGY株式会社が共同でプログラム開発し、当社が運営を行いました。

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